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2009年7月31日 (金)

夏の100冊その6(51冊~60冊)

はい、そんなわけで夢幻燈本舗夏の100冊。
今回は51~60です。


サマー/タイム/トラベラー1、2/新城カズマ/早川書房

「タイムトラベル」なんて手垢の付ききったテーマのお話を語るためには、そこに放り込む自分のSF的思考実験を、どれだけ新しく見せることが出来るかかなぁと思います。
加えて、新城カズマの魅力は、「キャラクター」というミクロ的な視点からはじめて、それを事件として拡大、最終的には社会システムや都市システムのようなマクロ的なところまで持って行くことだと思います。
まぁそんな細かいことは置いておいても、「長野県」+「タイムトラベル」+「鶴田謙二」ってだけで買いなんですけどね。


神様のメモ帳/杉井光/アスキーメディアワークス/既刊4巻

リストを作った時点で3巻完結だと思ってたんですが、その後続刊発売。「んあー」と思ったのですが、今さらリスト変更もややこしいので例外的にそのまま続行。
すごくよくできた「魔法遣いの弟子」の話。未熟すぎる主人公が根性見せて成長していく話です。やはり成長をしようとして足掻く主人公に周りの人間が協力的になっていく様子はすごく熱く美しいと思うのです。それぞれが背負う過去もキャラクターに厚みを与えています。


スタンド・バイ・ミー/スティーブン・キング/新潮文庫

「うぇんざないっ」
まぁ映画のイメージがものすごく強いってのはあるんですが、ずーっと長い線路の上を歩いて冒険に出る少年達っていうもうその図だけで勝ちなんですよね。
自分がまだ子供なので、世界がものすごく広く、大人は大きく思える感覚。広い世界にこぎ出していこうっていう意思と、ワクワクする高揚感。そして、打ちのめされる絶望感。どこまでも続く線路は、やっぱり未来に繋がっているのです。


宝島/スティーブンソン/岩波書店

宝探しの原点はやっぱりここにあるのかなと思いますが。宝探しというのは決して夢と希望に満ちあふれたのみのものでは無いなぁということを教えてくれます。
人間同士の思惑が絡み合って存外泥臭い。
それでも主人公の少年、ジムの利発さは嬉しくなりますし、物語冒頭の気味の悪さは絶品です。後、ぼく「ラム酒」って言葉をこの作品で覚えました。

幻獣ムベンベを追え/高野秀行/集英社

「ムベンベ」とはアフリカ奥地に生息しているのではないかと言われているUMA(未確認生物)。このムベンベを、著者が所属していた早稲田大学探検部をはじめとした合同調査隊が探していくという内容。
「UMAなんている訳ねーじゃん」と言いきってしまうのはまぁ簡単ですが、科学的に調査、「探検」出かけるってのはとにかく大変で、困難で、とっても素敵なことだと思います。
文章が気取ってもおらず、何かに偏向しているわけでもなく、すごくニュートラルで誠実なので安心して読めます。


大久保町の決闘-COLLECTOR'S EDITION/田中哲弥/早川書房

「兵庫県明石市大久保町はガンマンの町である。ここでは男はみんな拳銃を携帯しているし、決闘で人を殺しても罪はならない。そんな馬鹿なと言われても本当のことである。この本に嘘はない」というあらすじだけ見てもどうかしている。
基本的には「センスが溢れ出しすぎた作品」。コメディよりもほとんどギャグに近いようなことを地の文でやりながら、緻密な構成と、キャラの演出で、最後にはとてつもなくさわやかな青春ものに仕上げてみせます。ぼくが、影響は受けても真似はできないなぁと思ったのはこの人だけです。


アップフェルラント物語/田中芳樹/光文社

「銀河英雄伝説」読んだことないので、まぁそういう人の選ぶ田中芳樹作品ですが、ぼくはこの「アップフェルラント物語」という作品が大好きで、何でかというと、「少女を守るために少年が戦う」からです。やっぱりそうじゃなくっちゃね。
読んだのはずいぶん前なのに印象深く残っているセリフが二つあって、「――どうやらアップフェルラントの未来は明るいようですよ。新兵器なんかなくても、勇敢な男の子と健気な女の子がいれば、国は滅びたりはしないものです」「子供が人生を楽しむには、広い場所が必要なのさ。だが、おとなの場合には、鍵のかかる部屋がひとつあれば充分」前半のはグッとくるセリフ、後半はニヤリとするセリフです。最後にですが、ふくやまけいこの挿絵もばっちしはまっていて魅力を底上げしてます。


気持ち満月,くじら日和―谷川史子長編集/谷川史子/集英社

漫画なのに表紙絵がないのは痛いのですが……元々「りぼん」に掲載されていた作品で、掲載されてた当時から好きなのは「くじら日和」の方です。ごく簡単に言うと少女マンガ版「めぞん一刻」かなぁ。絵柄は、地味なんだけど大変可愛らしいい感じ。お話としても強烈なフックがある訳ではないのですが、感情の揺れを丁寧に描いて、ぼくの好きな着地点へ連れて行ってくれる作品が多くて好きです。ここのところ作品群が文庫でちょこちょこ出てるので、合わせてオススメです。


ぺてん師列伝――あるいは制服の研究/種村季弘/岩波書店

「ペテン師や詐欺師が好きです」と言うと確実に軽蔑されると思うのですが、近年の「振り込め詐欺」なんかはもちろん嫌いです。何よりセコい上に常に弱者が標的になるので。
ただね、過去を振り返ると大変スケールのでかい詐欺師もいたのです。その手口や頭の良さは時に格好良く、憧れさえすることもあるのです。
そしてこの種村季弘。すでにご紹介の澁澤龍彦と並んで語られることも多い人ですが、やっぱその文章はすばらしく、「語る」技術ってほんとすごい。

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最近、テレビ見てると「ハリウッド版 ドラゴンボール」DVDのCMを見かけます。
出来不出来って以前に、さして話題にすらならなかったような気がするので別段内容はどうでもいいんですが。
CMのキャッチコピーで「今度のドラゴンボールは、悟空に尻尾が生えてない!」「亀仙人が甲羅を背負っていない!」「そして、ブルマがすごく可愛くなった!」「違いを楽しもう!」って言ってるんですが。
突っ込まれそうなところを先回りしてあらかじめ言い訳をしているような気がして何だか気持ち悪いんですよね。「コケたのは分かってるけどさりとてDVDは捌かなけりゃならん」という大人の事情が透けているような気がして。


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2009年7月27日 (月)

仰感の行間( from 古月藍莉《ふるつきあいり》 to 香緒美)

「兄さんはまだそれが分かっていないのです。まぁそれで苦しむというなら――好きなだけ苦しめばいい」

「ちょっ――そんな――」

「その意味では、あなたも被害者です。……たぶん」

「え……?」

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夏100は進行中としても日々紹介したいものは増える。
遅々として進みませんが寄り道はこのサイトの常と諦めていただきたい。
(開き直り)


サマーウォーズ/岩井恭平/角川書店

「ムシウタ」シリーズの作者がノベライズを担当。ちょっとまえには西尾維新が「デスノート」のノベライズをしていたりしましたが、なんだろう、出版社が力をいれているのかしら。

と、そのことは構わないんですけど。

ぼく、この本を「映画のあの複雑な構成をどうやって小説にするんだろう」というお手本のつもりで手に取ったのですが。

手に取ったのですが。

考えたら映画はまだ公開前ですけど。

まぁ8/1には封切りなので毎月の角川文庫の発売日考えるとここなんでしょうけど、いいのかネタバレ?

以上気になったこと。

そして8/1の封切りが近づいて参りました。皆さん、損はさせません!
こいつは映画館で観ることに意義のある映画です! ぜひ1回は映画館に足を運んで観てみてください!



きつねのはなし/森見登見彦/新潮社

単行本で読んだのは「太陽の塔」だけで、あとの作品はすべて文庫化されるタイミングで読んでいるわけですが。そして今単行本を結構なペースで刊行しているのでこの先読めるのが楽しみな森見登見彦なわけですが。

もはや聖典の「太陽の塔」、SF的思考実験の「四畳半神話体系」、この上なく素敵なエンタテインメント「夜は短し歩けよ乙女」と読んできてこの「きつねのはなし」なのですが。

なんかすごく「小説」ってやつを読ませもらった気分です。

正直、エンタテインメントの「物語」に関しては分かります。ただ、なにせいわゆる「小説」ってものがイマイチよく分かりませんので所詮比較できる対象をぼくは多く持っていないのですが。
この「きつねのはなし」をカテゴリー分けする場合、要するに「この『きつねのはなし』ってどんなの?」って聞かれた場合ぼくは「小説」ってひと言で答えるなぁ――と。他に分けようがない。特に、「行間から生まれる感情」が要因のひとつだとは思うのですが。

あ、もっと簡単な言葉で言うと、「ちょーおもしれー」です。

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2009年7月24日 (金)

夏の100冊その5(41冊~50冊)

さぁ当初の目的からはおおきく遅れ、なんぞ世間では夏休みもスタートしがちな昨今ですが、皆さんいかがお過ごしですか。そうですか(←聞いてない)。

とにかくだよ、「あいつまた放り出したんじゃねーの」は極めて心外。

はじめたもんはきっちり締めたらー!

というまぁそんな気合いと一緒にお送りする夢幻燈本舗夏の100冊。まだまだ懲りずに行ってみよう!


(有)椎名百貨店/椎名高志/小学館

古くは「みっかみすっわ~んっ!」、最近では「絶対! 可憐!」でお馴染の(お馴染なのか?)椎名高志ですが、とってもセンスオブワンダーで、真っ直ぐなマンガ描きだと思っています。「(有)椎名~」は日常の脇にSF発想を放り込んで味わい深い話になっています。SF的な嗜好が透けて見えるのは、「GS美神」収録作品のサブタイトル「何かが道をやって来る」「愛に時間を」「いつかどこかで」「私を月まで連れてって」あたりで伝わってきますね。ぼくはロボット3原則をアシモフではなく椎名高志から教わりました。



わしらは怪しい探検隊/椎名誠/角川書店

もはや最盛期の勢いは衰えて久しいですが、それでもぼくの人格形成、特に「活字」部分に関して最大の影響を与えたのは間違いなくこの人。「圧倒的濃厚的決定的とんこつ的チャーシュー煮卵的大盛り的ラーメン」とか「バキバキビキッとドクダミ光線を発射し」とかそんな文章。「あー、別に文章を難しく考えることなんか無いんだー」と意識して以来適当に文章を書くようになりました。
「わしら~」は「怪しい探検隊シリーズ」第1作目。男達がひたすら「野営」(キャンプにあらず)をします。

表紙がホラーっぽいですが別にホラーじゃないです。

短編集で、中に納められている「ハドソン・ベイ毛布よ永遠に」という作品が読みたくて手に取った訳ですが。
まぁもはやみなさんにはあきれていただく他ないことにまたタイムトラベル作品なのですが。
皮肉とロマンスのギリギリの境界線ってな作品に仕上がっています。


月が100回沈めば/式田ティエン/宝島社

「サンプル」という大変割のいいアルバイトのバイト仲間アツシが失踪したのを探し始めた主人公。探偵小説好きの美少女「弓」をはじめ、様々な人間と出会いながらアツシを探す――というのが筋。渋谷の街に集う様々な人間の価値観、主人公達の価値観、そんな価値観が次々に描写されて面白い。ラスト付近そんな価値観の出会いの末に現れる「喜怒哀楽では中々割り切りづらい感情」が立ち上る瞬間があるのですが、そいつにはグッときました。


燃えよ剣(上・下)/司馬遼太郎/新潮社

おそらく最も有名な新撰組小説ではないでしょうか。中心は近藤勇・土方歳三・沖田宗司。特に土方にばっちりロックオンで、まぁその格好よさたるや「異常」。「幕末新撰組」の時に「ぼくは永倉新八が大好きなのです」と言っておきましたが、燃えよ剣読むと「まぁ、こっちの3人の方が絵にはなるよなぁ」と思わざるをえませんねぇ。


妖人奇人館/澁澤龍彦/河出書房新社

永遠の異端。
澁澤龍彦を見てすごいなぁと思うのは、その文章がどれも驚くほど読みやすくて平易に書かれているということ。基本的に黒魔術やら毒薬やら悪女やらそれこそこの本の妖人やら奇人やらっていうどうしようもなく怪しいものを扱っているにもかかわらず、それを普通の人に向けて紹介するときすごく分かりやすいように書かれてる。
なので、安心してオススメです。


100万ドルを取り返せ!/J・アーチャー/新潮文庫

詐欺まがいの方法で、大金を巻き上げられてしまった4人の男が、巻き上げられた合計金額の「百万ドル」を取り返すために様々な仕掛けをほどこすとお話。
「少しも少なくなく、少しも多くなく、取り返す」というのは潔いのと、4人の男がそれぞれに個性的なのと、その個性的な男を4人配置する際、単に個性的なキャラクターを並べるのではなくて、そのキャラクターに依って生まれるプラスマイナスの波を上手くつけている点に感心します。


ゲイルズバーグの春を愛す/ジャック・フィニィ/早川書店

はい、このサイトでは説明不要。名作。春でも夏でも関係なし。


十五少年漂流記/ジュール・ヴェルヌ/集英社

ちょいとお値段高めなのですが、桂正和が表紙絵を担当ということで集英社版を。
話の筋はもうご存じじゃないかと思いますが、無人島に流されてしまった15人の少年達によるサバイバルです。
生き残るための創意工夫にはじまり、リーダー争いなどの関係性など、改めて読み返すと、また違った驚きと発見がありますよ(個人的に面白かったのは結構この子達鳥を撃ったり捌いたりってのには抵抗がないのですよね。「狩り」と一般的に親しむお国柄だからかも知れません)。昔アニメ版を見ていて「将来船には乗らないようにしよう」と強く誓った記憶があります(←「自分だったらどう生き残るか」を考えるべきだと思います)。

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2009年7月15日 (水)

バカの証明

夏風邪をひきました。

バカしかひかないと言われてる夏風邪です。

皆さんもエアコンの効いた部屋でのドラクエには気をつけるが良いです。

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それでは本日も行ってみましょう!
夢幻燈本舗夏の100冊!


どーなつ/北野勇作/早川書房
なんかえらいクマが可愛いので買ってみたのですが、変な本です。
動物をメインガジェットにSF的思考を展開させるという作りなのかなぁと思うのですが、それで何か壮大なプロジェクトを動かすのとも、恒星間戦争をするというのとも違う(背景にはそんな匂いもあるのですが……)。
満たされない気持ちは提示されるのですが、別に満たされなくてもそれはそれで……というまぁなんだか不思議な本です。


新耳袋―現代百物語 第一夜/木原浩勝・中山市朗/角川書店
現代「怪談」の最高峰。いわゆる「怖い話」が「怖い」のは、語られた内容がどうかってことよりもその「語り方」であると気付かせてくれたシリーズ。何を語って何を語らずにおくか、そしてどうやって落とすのか…。この作品を読んだ後、例えばネット上に数多ある「怖い話」と比較をしてみると、語り方の重要性が良く分かります。
と、理屈は抜きにしても、とにかく夏と言えば「怪談」ってことでひとつ!


巷説百物語/京極夏彦/角川書店
偶然「百物語」が連続しましたね。夏と言えば「姑獲鳥の夏」がそのものずばりで良いのかもしれないのですが、あちらはまだシリーズ継続という扱いで。厳密にいうと「巷説~」シリーズもまだ出てるんですが、時間軸が前後してるし、これ一冊で十分完結してるんで良しでしょう。講談調というのか、特に御行の又一の決め台詞が気持ちよく思わず口に出して抑揚をつけてみたくなります。「道を通せばかどが立つ。途を外せば深みにはまる。所詮浮世は夢幻(ゆめまぼろし)。邪心野心は闇に散り、残るは巷のあやしい噂――御行為奉(おんぎょうしたてまつる)」


孤独のグルメ/久住昌之・谷口ジロー/扶桑社
「モノを食べる時はね誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ独りで静かで豊かで…」でお馴染のグルメマンガ。様々なシーン、様々なシチュエーションで、主人公、井之頭五郎が大変理屈っぽくメシを食います。
「モクモク」って感じで食べる様子がかなりおいしそうで、「うまそうな感じ」としては藤子・F・不二夫が描く食べ物と同じくらい好きです。


クラウド・コレクター/クラフト・エヴィング商会/筑摩書房
副題は「雲を掴むような話」。中々人を喰ったネーミングです。地図や社会システム、出来事から世界を設定するのではなくて、存在している商品から世界をデザインしようとする試みとくくればそう遠くは無いのでしょうか。
よくもまぁ次から次へと…ってくらい不思議な商品が登場してきて、カタログをめくっていくような楽しみにワクワクさせられます。

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4人の署名/コナン・ドイル/東京創元社
コナン・ドイルの業績のひとつは、「世界に飽いたコカインジャンキー」っていう、言ってみればダメ人間のクソ野郎を「名探偵」として世に送り出したことだと思います。シャーロック・ホームズは言うまでもなく「名探偵」ですが、要は鋭すぎて探偵にでもなるより他に生き方が無かったってとらえるとより魅力的に彼とお付き合いできるような気がします。東京創元社版を選んだのは1年間限定でカバーイラストが鶴田謙二のものになっているから。ホームズの内に抱えるものが噴出したような悪人相は実に良い感じです。
※こちらだけどうしても鶴田絵を使いたかったのでアフリエイト画像ではないです。


玩具修理者/小林泰三/角川書店
何でも直してくれると言う「玩具修理者」の元に、弟を殺してしまった姉が訪れて――と始まっていく表題作は純然たるホラーで、著者のデビュー作。おっかなくて面白いのですが、実はですね、これ同時収録作がありまして。「酔歩する男」というのですが、なんとこちらはタイムトラベル! 当然ネタバレは出来ないのですが、そうか、ホラー仕立てのタイムトラベルも可能なのかと思わせてくれる作品。感動とは違ったベクトルからゾクゾクするタイムトラベルだって存在するのです。



片手間ヒロイズム/小林めぐみ/一迅社
小林めぐみ。「ねのこめ」3部作にぼくの好きな「必殺お捜し人」シリーズと、「SF的発想」を根本に、それを「女性的(性差を強調したいわけではないですが、男性の頭でこのやり方は難しいと思う)な柔らか頭」で「突拍子も無い方向に展開させる」作品を描き、読む度に新しいことを教えてくれる作家です。当たり外れが大きいことが特徴のひとつとして挙げられることがありますが、おそらく毎回毎回思考実験を仕掛けるからでしょうね。




深夜特急1/沢木耕太郎/新潮文庫/全6巻
ぼくが深夜特急の世界に触れたのはもう10年くらい前に大沢たかお主演、「劇的紀行 深夜特急」というタイトルでテレビ放映されたのが最初です。ドラマなのかドキュメンタリーなのかなんだか変わった撮り方をしていたこの番組がえらく気に入り、特に劇中主人公が「飛光よ 汝に一杯の酒をすすめん」と呟くシーンでいたく感動したのを覚えています。そういうわけなので、言ってみれば入り口が随分亜流ですね。原作は言うまでもなく名作。旅に出ても出なくても、折れかかった時に読めば前進のための気力をくれます。


人間の土地/サン=テグジュペリ/新潮社
実にナイスな宮崎駿装丁。「星の王子さま」ではそんなに感じなかったのですが、「夜間飛行」とこの「人間の土地」を読んで気がついたのはこの人の「視点」の独特さ。「鳥瞰」の視点を持っているんですよね。それも、ジェット機のように雲の上まで行ってしまう視点ではなく、地上の人間の生活の様子を眺めることができるまさに「鳥」の視点。飛行機乗りだったからこそ身についた視点だと思うのですが、現在だと中々どうすればいいのか。セスナでも操縦するとこんな感じになれるのでしょうか。

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2009年7月14日 (火)

夏の懐

モキチさん普段そんな簡単に言いませんよ? よっぽどですよ?

ほんっとにありがとう!

試写会行ってきました。

こんなことを書くと、「前回の更新は伏線やったんかいっ!」っつって突っ込まれそうなんですが、ホントに全くの偶然で、あの後誘ってくれる友達がいたのです。

細かいことは言いませんのでぜひ皆さん劇場へ足を運んでいただきたい。ぼくももう一度劇場まで観に行こうと思ってます。

はふー(ため息)。

一点だけ、細かいことに触れておくと、「時をかける少女」の方が構成は美しいと思います。でも、ほんっと幸せな映画でした。英語の「Happy!」ではなく日本語の「幸せ」。
瑕(きず)はあるのかも知れませんが、ぼくはこの夏を愛します。

I Love "SUMMER WARS" in the summer time.

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2009年7月12日 (日)

特別編 理由央の竜王

こんにちメラゾーマ。

お元気ですかイオナズン。

どうも、夢幻燈=ギガスラッシュ=本舗のモキチジゴスパーク稲妻斬りベホマズンです。

そんな訳でいよいよドラゴンクエストⅨも発売となりまして。皆さん猿のようにアレフガルドの平和のためにゴーレムを狩っていることと思うのですが。
え? アレフガルドには? 行かない? そうですか。まぁいいや。

ぼくはと言えばそりゃあもうイベントとしてってのの他に前情報見てる頃からこの「Ⅸ」には期待してましてね。元々「FFⅨ」大好きなので、この「Ⅸ」って数字は結構ぼくと相性がいいようなんですが。

で、さっそくDSが稼働中なのですが――うん、これ超楽しい! まぁ「ドラゴンクエストマーチ」が流れた時点である程度パブロフ的に「うーむ、よしよし」ってなるんですけどね。

でも楽しい!

「ドラクエⅢ」の頃にぼくが脳で補完してたことを、今技術が補完してくれてる!

何より主人公とメンバーを自分でカスタマイズ! 顔から髪型から全部決めて、で、装備変えたらころっころと外観が変わっていくのが楽しすぎます!

と言うわけで今んとこどっぷりはまってますよ。

ただねぇ、装備品のビジュアルが気に入りすぎた場合に性能とビジュアルとの間で選択を迫られる機会多し。うぐぐ。
嬉しい幸せ。うんうん。こういうゲームで良いのですよ。オススメですよー。

今日気になったこと其の1:っつーことはだ、面白いRPGってんならDSくらいのスペックがあれば十分ということでは?←いや、ロートルゲーマーの戯言ですよ?

今日気になったこと其の2:渋谷の大型電気店で購入したんですが、なんのためらいもなくゲーム販売フロアまで階を上がって「お、あったあった」つって買って、玄関フロアまで降りてきたらそこに作られた特設販売スペースに長蛇の列だったのですが……あれ何だったの? なんでみんな並んでたの? なんかそこで買うと特典があったのか、はたまたみんな上で売っているのを知らなかったのか……。思わず「え? ぼくもしかしてドラクエじゃないもん買った!? Ⅴのリメイクとか!?」と慌てました。マジでなんだったんだろう。

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2009年7月11日 (土)

断言の団幻( from 槍司 to 晴音)

「ハル! 自分を信じろ!」
「無理! 100%だ!」
「あー、気持ち良いくらい潔いね、お前」

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東亰異聞/小野不由美/新潮社

新聞端の新刊案内ではじめてこれを見たとき「東京」と似て非なる「東亰」のおぼろな美しさと、そこに跋扈する「火炎魔人」「闇御前」「人魂売り」「首遣い」といった怪しげな存在に惹かれてふわふわと本屋に向かったのを覚えています。
小野不由美とはその後「十二国記」で深いお付き合いをすることになるのですが、一巻ものであることや、季節を考慮して今回はこちらを。


ヒートアイランド/垣根涼介/文藝春秋
自分と、20歳以上年齢が離れていても価値観を共有できる人もいるのだなぁということを実はこの作品を通じて感じたことがあって。具体的に言うと、世話になった上司が「これ読み終わった、面白いぞ」と放ってくれた作品でした。お話は、ストリートギャングの頭アキが、仲間の関わった事件を解決するために、頭の切れる相棒カオルと走り回という内容。ぼくの好きなコンビもので、まっすぐでもない少年達の友情と成長が読めるって点で大好きです。


美亜へ贈る真珠/梶尾真治/ハヤカワ書店
梶尾真治ならもう四の五の言わず「おもいでエマノン」を挙げておけばいいんですけどなんと残念ながらエマノンシリーズはビックリの絶版。勿体ないから復刊させてください。って次第なので時間SFテーマで今回はこちらを。「エマノン」が気になる方はコミックス版をどうぞ。原作に全く劣らずの出来になっています。んで「美亜に贈る真珠」。短編集ですが、「美亜へ贈る真珠」「誌帆が去る夏」「梨湖という虚像」「玲子の箱宇宙」「ヒトはかつて尼那(にいな)を……」「時尼(じにい)に関する覚え書」「江里の"時"の時」と、タイトルのすべてに女性名が入っています。梶尾真治の好きなところは、SFテーマをロマンスと上手く掛け合わせるってところ。時空を越えた恋人達は美しいのです。



ビート・キッズ1、2/風野潮/講談社/全2巻
もうね、1点突破型の才能を秘めた熱血天然少年と、クールな天才型少年が音楽をやるっていう骨組みだけで個人的には持って行かれるわけですよ。で、まぁそれぞれに家庭環境であったり、思春期的な問題であったり、色々あるわけだ。でも音楽は楽しくてしょうがない。そういうものを複合的に上手く組み合わせて、笑えて泣けるお話に編み上げています。前編大阪弁で語られるのではじめは戸惑ったのですが、それが雰囲気を上手く調整していますね。1巻で吹奏楽を始めた少年は、2巻でやっぱりロックバンドを結成します。王道で最高です。


ボーダー 迷走王 vol.1/狩撫麻礼 たなか亜希夫/双葉社/全8巻
もう随分大人になってから触れた漫画なのですが、はじめ読んだとき「なんだこれ?」と思った記憶があります。今まで読んだもので近似値で並べることの出来るものがなかったので異質だったのです。だって主人公はおんぼろアパートの元便所(家賃3000円)に住んでいるんですから。もうだいぶ昔の漫画なので社会情勢なんか古くなってしまっていますが、「いわゆる『常識』サイドの言うことになんて耳を貸すことはない」と背中を押してくれますし、「アウトサイダーでいることの難しさ」そして「アウトサイダーでいることのすばらしさ」を教えてくれます。


魔法飛行/加納朋子/東京創元社
「ジャケ買い」ならぬ「タイトル買い」をすることで有名なモキチさんですが、遡ってみるとこの「魔法飛行」あたりはその原体験付近の本だと思う。だって「魔法」+「飛行」だぜ? 言ってみりゃ「翔封界(レイ・ウィング)」だぜ? おっとモキチさん、そいつは次への伏線だ。閑話休題。ともかくそうやってタイトルで選び取った一冊。一応はミステリーなのですが、物語は全編通して「静かな奇妙さ」に満ちています。こういった「日常の謎」を扱った作品はともすると「それがなんなの?」になってしまい、まず読んでいる人に「主人公にこの事件を解決させたい!」と意識づけなければならず、例えば殺人事件よりハードルが高いと思う。だからこそ、できあがった作品は愛しさに満ちるのですねぇ。


スレイヤーズ!/神坂一/富士見書房/全15巻
はい伏線回収。
もう皆さんにおなじみの「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに 闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!」ですよ。長いよ。
誰がなんと言おうとこの作品が無ければ今はないわけで、新装版も出てますから照れずにこの夏に読むべきですよ。完全な蛇足なのですが、お話の作り手として読むとまたこの作品の偉大さに気がつきます。


翼はいつまでも/川上健一/集英社
コードネームMr.滂沱。もうふざけんなって思いますよ。元々は椎名誠がえらい勢いで推していたので手にとってみたら、まぁこれがいい物語で。個人的に中学生は「部活」と「恥ずかしい恋」と「音楽」で出来上がっているのです。ええそれで良いんです。ラジオから流れてきたビートルズに痺れて一歩踏みだしゃいいんです。ええそれはもう。とにかく気持ちの良い物語なので読みながら「ああもう!」とかゆってジタバタ転げ回ること請け合いです。今回列挙の他の本と比べてみても特に夏に読んでもらいたい物語です。


川の名前/川端裕人/早川書店
子供の時に、帰り道が分からない所までしゃかりきに自転車を漕いだ人。
少年時代、世界に満ちあふれる不思議と正面から取っ組み合っていた人。
かつて冒険に憧れ、冒険をし、今冒険を懐かしがる人。
環境問題を声高に叫び立てる人たちに、どうもしっくりいかない気持ちを抱えている人。
そんな人たちにはぜひ。
少年達が冒険をしたときにカバーするのが大人です。冒険をさせないよう世界にカバーをかけることが大人なんじゃありません。
ぼく今すごくいいこと言った!

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2009年7月 8日 (水)

火急の過泣

いや、そうね、ポンポン記事を更新するもんじゃないってのはよく分かってるんですよ。

今回続き物の企画が進行中なんだしね。

でも仕方ないよね、気分が乗っかっちゃったんだからさ。

やばいんだ。

たぶんこの夏、事故る(事故る=感動して泣く)。

だいたい何でぼく、たかだか予告編で半分泣きべそかいてんだよ。

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名通市の夏一( from 創菜 for 刻)

「大好きだよ」

「――あのねぇ、そうやって乱発すっから安っぽくなんの」

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さて、夢幻燈本舗夏の100冊第2回。


草壁署迷宮課おみやさん/石ノ森章太郎/双葉社/全3巻
ときわ荘出身者の中で、石ノ森章太郎はバランス型の秀才という感じで好きだったりします。趣味で警察官をやっているような主人公「おみやさん」と新人美人警官「洋子」のコンビもの。人間の行動心理を事件と絡ませ、さらに男女差を使ってお話をまとめてあって面白いです。この時代の漫画はまーネームが多くて、蘊蓄が詰まってて拾えるものが多いです。


高野聖・眉かくしの霊/泉鏡花/岩波書店
文章はとにかく読みにくいです。中々意味が入ってこないので大変とっかかりづらい。
ただ、幻想的な雰囲気をやったら美しく演出する技術とネタとして怪異を扱っていることに関しては断然の一級品ですので、ぜひ。


死体は語る/上野正彦/文藝春秋
タイトルからすると「怪談?」とか思うかも知れませんが、ノーで、真面目な解剖学の話。
東京で「変死」の形で人が死ぬと、必ず検死が行われることになるそうなのですが、そうすると呼ばれるのが「監察医」。当然「変死」なので、死因が分からないことが多い訳で、検死の中、遺体に残る痕跡から次々にその死の背景が明かされていきます。
極めて科学的で、理屈の側面から語られていく「死体」の話です。


エーミールと探偵たち/エーリヒ・ケストナー、池田香代子(訳)/岩波書店
度々語ることなのですが、「子供だまし」と「子供向け」は意味が違うのです。「子供向け」にきちんと語られた物語は大人が読んでも十分に面白いですし、「ま、こんなもんでしょ」と作られたものは「子供だまし」になってしまうんだと思っています。
「エーミールと探偵たち」は大変気持ちの良い物語。特に好きなのは子供たちが、問題に立ち向かうために組織を立て、役割を振っていくっていう様子。大人も子供もその辺は違いなんて無いのです。


江戸川乱歩傑作選/江戸川乱歩/新潮社
「二銭銅貨」「心理試験」「D坂の殺人事件」「人間倚子」と、有名どころが収録されているので、とりあえず乱歩読んでみようと思ったら手にとって間違いない一冊かと。あの明智小五郎もきっちり登場してくれますしね。
個人的に好きなのは収録作品では「二銭銅貨」ですかね。収録外になりますが、一番好きな作品は「押し絵と旅する男」です。


かいしゃいんのメロディー/大橋ツヨシ/竹書房/全4巻
特に疲れたときに読め! 細かいことは言わない!


お父さんは心配性/岡田あーみん/集英社/全4巻
「天使なんかじゃない」や「ときめきトゥナイト」「姫ちゃんのリボン」「星の瞳のシルエット」……っていう漫画が並んでた当時の「リボン」にあって、なんでこの人の漫画が同時掲載されていたのか、もはや一部では伝説となっているわけですが。
とにかくある種の天才が残していった奇蹟のギャグマンガです。本当は「こいつら100%伝説」の方が好きなのですが文庫化はされていないんですよねぇ。



コールドゲーム/荻原浩/新潮社
「噂」とどっちにしようかなぁ――と思ったのですが、劇中の季節が夏であることを決め手にこちらをピックアップ。中学時代のクラスメート達が次々に事件に遭い、犯人として当時のいじめられっ子が浮かび上がる――。荻原浩はしっかりと腰を据えて物語を展開しますので、こちらも真っ正面から物語に取り組んでいけます。

真夜中のマーチ/奥田英朗/集英社文庫
イベント屋のヨコケン、ダメサラリーマンのミタゾウ、謎の美女クロチェの3人がヤクザから10億円をだまし取る――そんな話。なんだい、ぼくはヤクザから大金をだまし取る話が好きなのかい?
登場時点では主人公たちそれぞれキチンとしているように見えるのですが、あっという間に情けなさを露呈、さぁそこからどう足掻く――はみ出し者たちが飛び回る様にはすごく共感できます。



きみにしか聞こえない-CALLING YOU/乙一/角川書店
乙一に対して抱く感情は「ずるい」であり、この頃角川スニーカー文庫から出た3冊は、「失踪HOLIDAY」「きみにしか聞こえない CALLING YOU」「さみしさの周波数」とタイトルまでもずるい。どれも心臓を内側からざわざわと刺激されるような切なさに満ちあふれていて、しかもその切なさを誘発するトリガーは新鮮な驚きで作られている。
読んだ後「ずるいずるい!」っつってジタバタと転げ回ること請け合いです。

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驚愕の教学( from ??? for 京介&晴音)

「バカな! あるわけがない! こんなこと――奴が選ぶわけがない!」

「起こったことだけが真実――あんた、言ってなかったっけ?」

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09夏の百冊

各出版社で今年も「夏の100冊」フェアが開催される中、夢幻燈本舗も乗っかってみてしまえというこの企画!

いや、1日10冊ずつ紹介していって何とか7月20日前には終わりそうです。
ぼくには直接関係ないとは言え、やっぱり夏休みに間に合わせたいですからね。
ちなみに個人的にもっとも好きな夏の読書スタイルは、風通しの良い縁側でごろりと横になって風鈴の音を聞きながらって感じです。

今回の「夏100」にあたっては以下の基準を作りました。

今回の選択基準(PCソフトで言うなら動作環境)
・現在書店で入手が可能な100冊の文庫(「今からでも手に入る」が条件)
※尚、在庫状況に関してはAmazon.comが参考です。
→単に好きな作品をズラーって並べるのも面白いんでしょうけど今回はもう少し趣の違ったものを作りたいなぁと。で、「夏の100冊」フェアに乗っかるのであれば今から手に入るものに限定、1冊でも手にとってもらえたらなぁなんて思ってます。

・一作家につき一作品(シリーズものの場合は一巻目)
→よりバラエティに富んだ構成に出来ればなぁと。
・ただし、例外的に上下巻にて完結するものに関しては2冊分を割いてピックアップすることを可とする
・シリーズものに関しては09年6月の段階で完結しているものとする
→ここまでの基準のあおりをもろに受けたのがいわゆる「ライトノベル」。基本的にシリーズ刊行されるものなのと、シリーズ完結に伴って印刷も終了と、大変みずものな性質なのでその間隙を縫ってのピックアップとなり全体的に少なめになりました。

・複数の出版社から刊行されているものに関しては、最も装丁が気に入っているものを選ぶ
→著作権切れの名作をはじめ、現在複数の出版社から様々な装丁のものがだされていることがあります。それに関してはもっとも好きな表紙のものをチョイスということで。

・ミステリーなど謎解きが主題になってる作品に関しては当然ことながらネタバレは禁止
・特例として、「文庫コミック」は含むことを可能とする
・データの記載順序は
書名/著者名/出版社名/コメント/補足 とする
・紹介順は50音順(海外作家の場合も、日本語表記にして50音順とする)

さらにガイドラインとして以下も頑張ってみる(PCソフトで言うなら推奨環境)
ジャンルはなるべく広範囲にとる(フィクション、ノンフィクション合わせてバラエティに富んだ構成にする)
・なるべくだが「夏」を意識した構成が望ましい
・7月20日~8月31日という「夏休み」期間をフルに使えば全冊読破可能の構成が望ましい

ちなみに2年ばかり前に、マンガ夏の100冊をやろうとしてモキチさん見事にぶっこけてますけどナイショだぜ。
あんまりしつこく突っついたらジェノサイド&バニッシュだぜ。

以上、御託が長く伸びましたが、夢幻燈本舗、夏の100冊。いってみましょう!


紳士遊戯/赤城毅/光文社
どんなに正当な理由があっても、暴力に対する復讐は、例えば誰かを殺されたことを、殺し返すというやり取りの形はどうしても後味の悪さが残ることが多い。
対して、コンゲームの「騙したら騙し返す」。このコンセプトは物語を大変爽快な方向へ持って行くことが可能だと思う。
まして、主人公サイドが、伝説の詐欺師・未熟だが熱血漢の若者・勝ち気な美少女とくれば尚更。
残念な点を上げるとすれば、文庫化に伴っての挿絵の変更。ぼくとしては村田蓮爾の表紙が大変好みだったのですけれど。


イリヤの空、UFOの夏1/秋山瑞人/アスキー・メディアワークス/全4巻
駒都えーじの挿絵、タイトル、忍び込んだ学校のプールで美少女との遭遇――もっとこう甘くて軽い青春ものがね、こー来ると思うですよ。したらこれがまたキリキリ、キリキリと胸を締め付ける。いい。うん、実にいい。ぜひとも夏休みの開始と同時に読み始めていただきたい名作です。


地獄変/芥川龍之介/集英社
芥川龍之介の作品だと他には「藪の中」「鼻」「河童」が好きですが、この「地獄変」のぶっ壊れた絵描きと、完成した絵のビジュアルがあんまりにもリアルに浮かび上がる様は一歩抜きんでて好きです。多くの出版社から発売されてますけどここはやっぱりナイス試みである集英社の名作×人気漫画家シリーズで。どんどんやればいいと思う。「挿絵は例えばあの漫画家さんの方が良かったなぁ」とか以外で文句をつける奴は結局の所不当に作品の価値を高めようとしているだけのはずなので放っておけばいい。所詮エンタテインメントの中で何ら機能できない化石どものはずです。


麻雀放浪記/阿佐田哲也/角川書店/全4巻
「麻雀」が入り口を狭くしてフィルターになってしまっている状況は分かるのですが、とにかく取っ払って青春小説として読んでもらいたい作品。麻雀のルールはすっ飛ばしても全然平気です。不満を抱えてイライラしている人、孤独にさいなまれている人には特にオススメです。


Dクラッカーズ/あざの耕平/富士見書房/全10巻
まぁ…ここん家のブログを読んでくれている人にとってはもう「うるせぇよ」の世界なのだと思うのですが…そうは言っても挙げずにはいられない!
先日完結のBLACK BLOOD BROTHERSシリーズとも迷ったのですが、やはりモキチさん的にはこちらを。構成力やキャラクターの掘り下げなどに関して決してBBBが劣っている訳ではなく、むしろ進化しているはずです。が、幼馴染みの少年少女、ひとつの街のアングラ文化を中心に展開する物語、そしてドラッグ――Dクラの方がぼく好みの構成要素を多めに含んでいるということなのだと思います。「ドラッグ」っていうあまりに飛び抜けた鎧で覆った王道の物語。



煙の殺意/泡坂妻夫/東京創元社
タイトルからもお察しの通り、ミステリーです。元々、米澤穂信が自分の好きな作品として挙げていたので読んでみた作品です。8作品収録の短編集なので楽に読んでいけると思いますが、一遍読む度に新鮮な驚きで魅了してくれます。「紳士遊戯」の紹介の際に「騙し返す」爽快さに触れましたけどこちらの作品では「騙される気持ちよさ」が味わえます。なるほど物語って大したもんだ。収録作の中でオススメなのは「椛山訪雪図」。



幕末新選組/池波正太郎/文藝春秋
ぼくの基本的な性格として「成し遂げようとする姿勢」が好きなのであって、実際に成し遂げてしまった人たちはそんなに好きではありません。本当は成し遂げて維持することが一番難しいのは分かっているんですけどね。まぁそんな感じなので、不器用に滅んだチンピラ集団新撰組は好きです。新選組と言うとどうしても「近藤・土方・沖田」の3人にスポットが当たることが多いのですが、ぼくが一番好きなのは二番隊組長「永倉新八」。沖田に引けを取らないくらい強かったらしいにもかかわらずどうにも地味なイメージが強いですが、政治や名誉にあまり拘らず江戸っ子の気持ちよさで幕末を駆け抜けたカラっとした感じが好きです。この「幕末新選組」はそんな永倉が主人公の珍しい一冊。同じく江戸っ子の池波正太郎がすごく人好きのする永倉を書ききっています。



グラスホッパー/伊坂幸太郎/角川書店
時期的には映画化されている「重力ピエロ」を押した方がいいのでしょうが…。
元の入り口は「戦線スパイクヒルズ」の井田ヒロトがコミックス化をしていたことなのですが、そっちは大人の事情が絡んでえらく早足になっちゃったんで原作にも着手。
特殊能力をもった殺し屋が次から次へと出てくる上にまぁキャラクター同士思惑抱えて騙して騙されてぐるんぐるん振り回されているうちにえらいスピードでラストへ突き進んでいきます。んで、その中で柱と言うべき「鈴木」が抱える「今は亡き妻」への思いの変化がグッときます。伊坂幸太郎という人は純文、エンターテインメントの狭間の複雑な位置にいるような気がしているのですが、ぼくは良質なエンターテインメントとしてオススメします。



バイトくん/いしいひさいち/双葉社 ※1巻画像がなかったので7巻で代用
いしいひさいちの漫画はどれも博覧強記と皮肉に富んでいて面白いのですが、中でも気楽さとバカバカしさで「バイトくん」シリーズが好きです。
いいのいいの、深刻に考えるだけ馬鹿ってもんさ。気楽に行こうさね。



赤・黒 ルージュ&ノワール 池袋ウェストゲートパーク外伝/石田衣良/文藝春秋
最近微妙にしゃらくささを感じる側面もあるのですが、「池袋ウェストゲートパーク」シリーズの石田衣良の乾いた語り口と観察眼、ネタの裁き方は大変好きです。
この「黒・赤」は一応「外伝」となっていますが、単品で十分楽しめます。内容はと言えば…ヤクザからギャンブルで大金をせしめる話。はい、大変ぼく好み。
読み終わった後に何となくテンションが上がったまんま街に飛び出したくなるので気をつけて。

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